皆さんはどんな企業がブラック企業だと思うでしょうか。
休日出勤やサービス残業がとても多い、上司のハラスメントが日常的、どれだけ頑張っても給料が上がらない。
このあたりはブラック企業と呼ばれる会社の多くが満たしているでしょう。
しかし、これだけではありません。
どうしても勤務の条件や職業柄、あるいは業界の悪習が残ったままでブラックになりやすい企業があるのです。
今回の記事ではそれを具体的に解説していきたいと思います。
ブラックと言われがちな仕事に共通しやすい特徴
当然ながら今回の記事で挙げている職業や職種すべてがブラック企業というわけではありません。
健全に営業し利益を上げ続けている会社もたくさんあります。
しかし、ブラック企業と呼ばれてしまいがちな仕事に当てはまりやすい特徴は存在するのです。
まずはその特徴4つを挙げていきます。
共通の特徴
- 労働時間が長い
- 勤務時間が不安定
- 平均給与が安い
- 顧客からの要求水準が高い
労働時間が長い
労働時間が長ければ長いほどブラック企業の基準に当てはまりやすいと言えるでしょう。
労働時間の長さはそのままプライベートの時間の減少に直結し、ワークライフバランスの悪化に繋がります。
これでサービス残業が多くを占めるならばさらに危険度もはね上がり、拘束時間が長い上に時間当たりの収入も良くないと、従業員にとっては大きなストレス要因になり得ます。
勤務時間が不安定
いわゆるシフト制、交代勤務の職種にありがちなのですが、夜勤明けに日勤、日勤明けに夜勤を入れるなど、従業員にろくなインターバルを取らせずに次の仕事をさせるパターンがあります。
もちろんインターバルを設けないのは法律違反なのですが、ブラック企業ならば人手不足や業務効率化を理由に遠慮なく仕事を詰め込んできます。
こうなると生活リズムが崩れやすくなるために心身共に健康管理が難しくなり、過労死のリスクも上昇します。
平均給与が安い
給与が良ければすべて解決するわけではないものの、前述のサービス残業と同様仕事量と給与が見合わないと判断されてしまえば従業員のモチベーションは低下します。
業種次第ではもともと人件費の割合が高かったり、正社員よりも非正規雇用の割合が大きい職種などでありがちです。
なお、令和2年(2020年)の正社員の平均年収は約433万円(厚生労働省調べ)なので、キャリアや年齢などにもよりますが比較するならこのあたりを参考にしてみてはいかがでしょうか。
また、根本的にブラック企業の多くは従業員にお金をかけたくない意識が非常に強いので、業績や利益が良くても従業員の待遇改善をしないため、経営陣と一般社員の給与に大きな差が付きがちです。
顧客からの要求水準が高い
低価格かつ高品質な商品やサービスを求められやすい業種だと末端の従業員への負担が増大しやすくなります。
- クレームの対応に時間を取られやすい、取れるほどの人的・時間的な余裕がない
- 顧客の要望が二転三転し、たとえ利益に繋がらなくともそれに応えなければならない
- 会社はこれらを当然だと思っており、従業員のフォローや待遇の改善などは考えていない
- その結果ますます労働環境が悪化する
こういった負のスパイラルが生まれてしまうと、やはり従業員のモチベーション低下や休職・退職の遠因となってしまいます。
ブラック企業になりやすい業種・職種
ここから様々な理由でブラック企業になりやすい業種・職種を紹介していきます。
なお厳密にはブラック”企業”ではないものもありますが、今回の記事ではあえて区別せずに扱います。
サービス業
いずれも生活にかかせない仕事ばかりですが、一方でそこで働く人たちの待遇は劣悪である場合があります。
やりがいや社会貢献性を求められがちだったり、待遇が悪くても我慢すべきという風潮が経営者はおろか第三者にさえまかり通っています。
いくつか種類がありますのでこちらは個別に解説していきます。
飲食業・小売業・宿泊業
全体的に労働時間の長さと休日が少ない企業が目立ち、平均年収も約307万円(令和2年賃金基本統計調査 厚生労働省調べ)ほどと控えめです。
また、店舗の営業時間=勤務時間という考え方をする企業が多く、残業という概念を認めない会社も珍しくありません。
業態などによって多少の違いはありますが、基本的には立ちっぱなしや動きっぱなしの仕事も多く、肉体労働の側面も強いです。
扱う商品次第では下記の営業職ではなくてもノルマが存在する場合があり、自腹購入を強制される会社も存在します。
職業柄不特定多数の来客対応があるため、理不尽な要求を行うクレーマーが日常的に来店して業務を妨害したり、ストーカー化した客に付きまとわれて日常生活にも支障が出るケースもあり得ます。
会社(店舗)側がこれらに対応せず、従業員に丸投げすることによって受ける精神的・肉体的な負荷も相当なものになります。
保育士
子供たちの保育という重要な仕事ですが、休日の少なさ、サービス残業を含めた労働時間の長さ、約320万円(令和2年賃金基本統計調査 厚生労働省調べ)という平均年収の少なさもあり、ブラックになりやすい仕事です。
資格取得までの道も険しく、大まかに以下のような形になります。
- 専門学校や大学に通う(2年~4年)
- 短大卒業以上の学歴で試験に合格する
- 児童福祉系の施設などで2年以上実務経験を積む試験に合格する
子供たちに何かあった場合は保育士自身が槍玉に上がりやすく、保育士一人にかかる責任も非常に重いです。
モンスターペアレントの過剰な要求や過酷な労働環境に起因するストレス、それゆえに人材が定着しにくく労働環境の改善もされにくいなど、求められるスキルや責任に対して厳しい仕事だと言えるでしょう。
介護士(介護福祉士)
こちらも高齢者や障害者の介助や介護というとても大切な仕事ですが、やはり平均を下回る年収約350万(令和2年度介護従事者処遇等調査結果 厚生労働省調べ)に、勤務先次第では休憩すらままならない労働時間や勤務体系である可能性があります。
- 勤務先が営利至上主義で人材の配置や待遇、利用者へのサービス向上を軽視・度外視している
- 利用者に何かあった場合はやはり介護士の責任が問われる可能性がある
- 介助・介護という職業柄、肉体労働になるので体力も必要になり、体を痛めやすい
介護職そのものは資格がなくとも就職できますが、介護福祉士の資格を持たない場合は多くの場合給与が上がりにくいために資格の取得を目指す方が多いのですが…
- 福祉系の学校を卒業(専門学校の場合多くは2年)
- 福祉施設での実務経験を3年以上積み、試験に合格する
このいずれかを満たす必要があるためにハードルも低くはなく、やりがいを感じられなければハードな仕事だと言えます。
営業職
売上さえ出せればインセンティブや会社からの評価を受けやすく、高収入を得やすい仕事の一つです。
ただし多くの場合は売上目標やノルマが存在し、売上を出せない場合の会社からの重圧や叱責も相当なものになります。
その上ブラック企業の場合は業績不振や身勝手な規則などにより以下の条件を従業員に課すケースもあります。
- 目標やノルマ達成の報酬がない
- 商品の自腹購入を強制される
- 手当を下げられたり減給されるなど、ノルマ未達成の事実上のペナルティが存在する
能力さえあれば稼ぎやすい反面、ブラック企業であるケースも多い職業だと言えます。
運輸業(トラック・バス運転手)
生活インフラを支える仕事の一つですが、こちらも拘束時間が全体的に長い傾向があります。
特に中長距離を走るトラックやバスの運転手は、会社次第では労務管理がずさんなケースがあります。
- 荷物の積み下ろしや待機時間が勤務時間として計算されない
- 有料道路を通ると運転手の自腹になる
- 顧客や荷物の都合、会社の方針次第では不眠不休で走らざるを得ないスケジュールを組まされる
- 法で限度を定められた走行時間を守らない、勤怠記録や運行記録の改ざんを行う
ほかにも、自動車の運転という仕事であるためどうしても従業員個人に下記のリスクが常に付きまといます。
- 交通違反における点数や反則金の支払い、それに伴う運転免許の停止や取消の可能性
- 事故によって自分や同乗者、あるいは相手が怪我、死亡する可能性
- 重大事故を起こした場合は逮捕や起訴、実刑判決を受ける可能性
ハズレの会社を引いてしまうと、最悪の場合交通事故を含めたすべてのミスや損害の支払いを従業員に押し付ける会社もいまだに存在しています。
IT業界(特にシステムエンジニア系)
以前からブラック企業と言われれば名前が上がりやすい業種でしたが、現在でも依然として無茶な要望をする顧客や、納期や価格に見合わない仕様の強制、それに伴う徹夜での作業が常態化している会社が存在します。
納品後のシステム不具合やバグなど、対応を迫られると24時間いつでも動かなければならないケースもあり、ブラック企業の場合はさらに残業代が出なかったり休日を潰される可能性もあるのです。
特に大企業の下請けや子会社、あるいはそれに近い経営状況の会社だと、これらの指示に会社自体が逆らえないために、従業員にとって厳しい環境が慢性的に続くことになるうえ改善も絶望的です。
まとめ
いかがでしたか。
繰り返しますが、これらに当てはまる企業や仕事全てがブラック企業というわけではありません。
しかし、あらかじめ警戒しておいて何も悪いことはないのです。
もしこういった企業や業種を志望する際は、事前の下調べや面接での質問などは必ずしておきましょう。
入社して初めてブラック企業だと気づいたら速やかに退職してください。
この記事が皆さんの参考になりましたら幸いです。